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くも膜下出血

くも膜下出血とは

くも膜下出血とは

脳を覆う膜に「くも膜」があり、このくも膜内の脳血管が動脈瘤などにより破裂すると、くも膜下出血が生じます。急激な後頭部痛が特徴で、吐き気、嘔吐、意識障害などが続くことが一般的です。くも膜下出血は出血の再発が高く、命に関わる疾患であり、治療後に深刻な後遺症が残ることがあります。日本では発生頻度が年間10万人に対して20人程度で、50〜70代が最も多いですが、リスクは30~40歳を超えると増加します。
くも膜下出血の大部分は脳動脈瘤の破裂が原因であり、迅速な処置・治療が必要です。脳動脈瘤は急速に発生するものではなく、MRI検査で脳血管を調べることで早期発見が可能です。脳動脈瘤がある程度の大きさに達すると破裂のリスクが高まりますので、この場合には予防的な治療を行うことでくも膜下出血を防ぐことができます。


くも膜下出血の原因

くも膜下出血の主な原因は、約90%が脳の動脈瘤の破裂によるものです。脳の動脈瘤には、生活習慣病に起因する紡錘状動脈瘤、ストレスなどに起因する解離性動脈瘤、先天的な嚢状動脈瘤などがありますが、その中でも一般的なのが嚢状動脈瘤です。高血圧などの生活習慣病や、くも膜下出血の家族歴がある方など、動脈瘤破裂のリスクが高い方は、脳ドックでMRI検査などの画像検査の受診をご検討ください。

くも膜下出血のリスクの高い人

MRI検査や脳ドックで脳動脈瘤が発見された場合、特に注意すべき点は以下の3つのリスクになります。

高血圧

高血圧はくも膜下出血の主要なリスク要因であり、高血圧の人はくも膜下出血による死亡リスクが通常の人と比較して約3倍高くなります(男性2.97倍、女性2.70倍)。
血圧が高いと、動脈瘤にかかる圧力が常に高まり、これが破裂のリスクを増加させる可能性があります。また、くも膜下出血の前兆となる血圧の乱高下にも気をつける必要があります。

喫煙

喫煙はくも膜下出血の最大のリスク要因とされています。様々な調査によれば、喫煙者のリスクは非喫煙者の2.2倍から3.6倍にも上るとされています。

家族歴

親や兄弟など、ご家族に脳卒中(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞)の既往歴がある場合にも注意が必要です。男女ともに約2倍の高リスクが報告されています。


くも膜下出血の症状

くも膜下出血の症状としては、時間とともに改善することのない突然の激しい頭痛や、かつて経験したことのないような痛みがあります。野球のバットで殴られたような痛みと表現する患者様も少なくありません。こうした痛みは時間とともに強くなる傾向があります。

くも膜下出血の前兆症状

時に、くも膜下出血の前兆症状として、血圧の激しい乱高下、視力低下、めまい、吐き気が見られることがあります。一般に、その際の頭痛はそれほどひどくない傾向があります。
これらの前兆症状は一時的に治まり、しばらくするとくも膜下出血が発症します。
くも膜下出血が起こった場合、自力で病院に行けるか、意識不明で救急搬送されるかによって、生存率は大きく異なります。自覚症状や違和感があれば、迷わず医療機関を受診してください。くも膜下出血は早期発見が非常に重要で、CTスキャンやMRIスキャンなどの画像検査が有効です。繰り返しになりますが、小さな違和感も我慢せず、速やかに医療機関を受診することが救命につながります。


くも膜下出血の治療

くも膜下出血が主に脳動脈瘤の破裂や解離性脳動脈瘤によるものである場合、短時間で再出血するリスクが高まります。再出血が起こると、脳への損傷が悪化し、致命的な状態や死に至る場合があります。くも膜下出血の原因を特定し、再出血を防ぐためには迅速な治療が必要です。治療手段としては、カテーテルによる血管内治療である動脈瘤塞栓術や開頭手術である脳動脈瘤クリップ手術などの治療が行われます。発生部位やサイズ、形により治療方法の難易度が異なります。動脈瘤が既に破裂した状態での手術は難易度が高く、出血による負担も考慮されます。手術後の経過によっては、脳や身体の機能が完全に回復しないこともあります。また手術の後にも脳血管攣縮による脳梗塞、正常圧水頭症などの合併症を起こすことがあります。
一方、未破裂の動脈瘤を事前に発見し、くも膜下出血のリスクを評価できるため、MRI検査を受けて脳の血管を評価することが重要です。これにより、事前の対策が可能となります。

MRI検査


くも膜下出血の予防

くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂によって起こる場合が大半ですので、予防のためには脳の血管に未破裂の脳動脈瘤がないかどうかを確認することが大切です。
頭部MRI検査により、解離性脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの他の病態も検出でき、これらの疾患が見つかった場合には、出血を防ぐための治療を検討することが重要です。また小さい動脈瘤も定期的に画像で経過をみていくことも大切になります。

いつもよりも強い頭痛の場合

一人で抱え込まず、頭痛について誰かに伝えましょう。家族や友人への相談や、インターネットで情報を検索する方が多いですが、決して自己判断せず、なるべく早く医師の診察を受けることをお勧めします。必要に応じて、MRI検査も検討してください。

長く続く頭痛の場合

頭痛がいつもより長く続いたり、薬を飲んでも効き目があまりなくまた痛くなったりすると、脳卒中などの疾患を疑って心配になる方も多いですが、薬の飲み過ぎも要注意です。
薬物の過剰摂取による頭痛は、仕事や家事が忙しくて病院に行くのが難しく、市販薬でやり過ごしている方に多い症状です。これを薬物乱用頭痛といい、薬を飲むと痛みが治まるので、飲み過ぎを気にしない方も少なくありません。注意が必要なのは、長期間にわたって服薬が続くと、薬の副作用が体内で起こる可能性があることです。長く続く頭痛の場合でも、一度は病院で検査を受け、頭痛専門医の診察を受けることをお勧めします。

命に関わる頭痛

脳卒中や脳腫瘍などの脳の疾患が原因で起こる頭痛は、生命を脅かす緊急性の高いものです。頭痛の原因は様々ですが、多くは緊張型頭痛、片頭痛、神経痛などです。ただし、深刻な頭痛も存在するため、これまで頭部MRI検査などを受けたことがない方は、頭痛を軽視せずに詳しく調査しておくと安心です。MRI検査で頭痛の原因がわかれば、安心して日常生活を送ることができます。