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吐き気を伴う頭痛

吐き気を伴う頭痛とは

頭痛は広く一般的な症状であり、日本人のおおよそ40%が慢性的な頭痛に悩まされていると言われています。慢性的でなくても、風邪を引いたり、頭をぶつけたりすると、多くの人は頭が痛いと感じることでしょう。このような中で、頭痛には多岐にわたる種類が存在し、国際頭痛分類にはさまざまな頭痛の型が明示されています。特に、吐き気を伴う頭痛という特徴的で不安を感じる症状に焦点を当て、その種類について説明します。


吐き気を伴う頭痛の原因

脳卒中

脳卒中とは、脳の血管の破裂や閉塞によって起こる疾患の総称で、大きく分けて脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3種類があります。脳卒中による頭痛は、通常吐き気を伴うので注意が必要です。
くも膜下出血の特徴は、「これまでに経験したことのない激しい頭痛が、突然やってくる」とされています。脳出血や脳梗塞の場合は、頭痛に加えて意識障害、滑舌障害、意識喪失などの脳神経障害の症状が併発することがあります。また、ふらつきやめまいも伴う場合があります。これらの症状が現れた場合は、至急医療機関を受診してください。

脳卒中

髄膜炎

髄膜炎は、脳と神経を覆う膜である髄膜に炎症が生じる疾患です。炎症を起こす原因としては、細菌やウイルスの関与が考えられますが、がんや薬剤も引き金となることがあります。一般的な症状には頭痛や嘔吐が伴い、首を前に曲げると痛むといった特徴的な髄膜刺激感が多く見られます。また、発熱や下痢を併発することもあり、時に風邪と誤解されることがあります。
小児にも発症する可能性があり、特に小児が頭痛や嘔吐を訴えた場合は、迅速に受診し検査を受けることが重要です。

片頭痛

片頭痛は、吐き気を伴う最も一般的な一次性頭痛です。主に20~40歳代の女性に多く見られ、こめかみから側頭部にかけて、ズキズキとした拍動性のある頭痛を引き起こします。頭痛発作前には、「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる視野にギザギザした光が閃く予兆が現れることがあります。
片頭痛が発症すると、光や音、においに敏感になることが一般的で、その際は暗くて静かな場所で休息することが勧められています。また、血管が拡張し血行が良くなると症状が悪化して逆効果となる可能性があるため、リラックスのために長風呂やマッサージ、お酒の摂取は避けてください。

なぜ片頭痛で吐き気が起きる?

片頭痛の発作では、まず脳の血管が収縮し、次に拡張するとされています。脳の血管が拡張すると、その壁に存在する神経を介して三叉神経が刺激されます。この刺激が大脳に伝わり、刺激に応じて痛みの伝達物質である神経ペプチドが放出され、血管が拡張します。
血管の拡張に伴い、周囲の三叉神経は一層刺激を受けます。これにより、血管の周囲で無菌性の炎症が発生し、これが痛みの原因と考えられています。さらに、炎症が連鎖的に発生し、血管内に炎症反応が広がっていきます。この刺激は脳の脳幹にある嘔吐中枢にも影響を与え、吐き気や嘔吐を誘発します。


吐き気を伴う頭痛で使われる薬

片頭痛に伴う悪心や嘔吐に対処するための薬には、経口・静脈注射・筋注・座薬など、さまざまな選択肢があります。主に使用されるのは、メトクロプラミド(プリンペラン®)、ドンペリドン(ナウゼリン®)などの吐き気止めです。これらの薬は副作用が少なく、片頭痛治療薬と併用することが推奨されており、一般に広く利用されています。
ただし、吐き気や嘔吐が強いと、内服が困難だったり摂取後に吐いたりしてしまう場合もあります。そのような状況では、静脈注射、筋注、座薬などが採用されます。たとえば、メトクロプラミドは静脈注射、ドンペリドンは坐剤、プロクロルペラジン(ノバミン)は筋注などが用いられます。
これらの薬は吐き気の緩和だけでなく、消化管の運動を促進し、トリプタン製剤などの頭痛薬の吸収を助ける効果もあります。例えば、スマトリプタン単独では十分な効果が得られなかった患者様に対して、メトクロプラミドとの併用が有益であると報告されています。また、吐き気止めとエルゴタミン製剤、アセトアミノフェンなどの消炎鎮痛剤を併用することで、頭痛の改善効果が向上し、消化器症状の改善が見られることもあります。抗ヒスタミン剤も吐き気の防止に有効な場合があります。


月経周期と吐き気を伴う頭痛について

女性の場合、月経周期に伴って片頭痛が発生することがあります。月経時の頭痛に対処する際には、トリプタンに加えてメフェナム酸と制吐剤(ドンペリドン)を併用することで、予防効果が期待できることもあります。先述の通り、ドンペリドンやメトクロプラミドは副作用が少ないため、積極的な利用が推奨されますが、動物実験において催奇形性が認められるため、妊娠中は絶対に避けてください。この場合、メトクロプラミドが代替として検討されますが、それでも妊娠中に使用するかどうかは有益性を検討し、慎重に判断する必要があります。